
第7章 〜まさかの崩壊 −ソビエト脱出劇 結末編−〜 今号は前号の旧ソビエト脱出劇の続きです!前号をご覧になっていない方は、前号「第6章」をご覧ください。 さてさて気になる結末はいかに!? 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜 まわり回って空港についたときには、私の飛行機はとっくに「空の物体」になっていた。 空港は、モスクワを一刻も早く離れたい外国人でごった返し、「ゴルビー(ゴルバチョフ元大統領)は暗殺された。戦争が始まるらしい」というデマが飛び交っていた。 とにかく情報の届かない国である。どこまで本当なのか、確かめる術もない。人々の不安が事実を歪め、その歪められた情報に人々は怯える。「戦争?」「まさか」と何度も胸の内で繰り返す。旧ソビエトで戦争に巻き込まれたら、故郷へは生きて帰れますまい、誰もがそう思ったに違いない。各航空会社のカウンターには列を乱した人々が群がっている。 予想はしていたが、インツーリストの対応はあっさりしていた。 「次の飛行機に乗れるように手配するしかないわね」 「それはいつなの?」 「この様子だと、空席は来週までないかもね」 私は、それでは困る、と何度も主張した。当時、公立の学校で教鞭をとっていたが、1週間も遅く帰国したら、とっくに新学期が始まっている。おまけに、空港内にある国際通話が可能な電話機は、どれも故障しているではあるまいか。 「そちらの手違いなんだから、なんとか明日の便に乗せてよ」 私はしつこく頼んだが、「それは無理」の一点張り。状況から考えて、無理なのはわからないでもないが、こうもあっさりと断られると、簡単に引き下がれなくなる。さらに食い下がりたくもなる。 「わかりました。明日の早朝、出直してください。当日キャンセルがでたり、乗り遅れる人がいたら、乗せてあげましょう」 半日がかりで、空港までやってきたのだ。空港と市街を往復するのはまっぴらだった。こんな状況下では、単純往復するだけで朝になるに違いない。 「今晩宿泊する予定のホテルを変更してくれる?」 嫌味のように、インツーリストのバウチャーを見せ、間違いを指摘する。案の定、「それはできない」と断られ、「ここで仮眠したら」と奥の部屋に通された。ベッドはおろか、ソファらしきものですらない。仕方なく、手渡された毛布に包まり、床に寝転がる。本当ならもっと文句を言いたいところだが、とにかく無事に日本に帰ることだけを考えることにした。 結局、翌日の飛行機はどれも満席で、どこを経由しても日本に帰り着くことなど、夢もまた夢ということがわかった。私は片っ端から、日本へ乗り入れている航空会社のオフィスを訪ねることにした。ブリティッシュ航空、オーストリア航空、全日空……。必死だった。状況を説明し、何とか乗せてもらえないか頼む。 「んー、難しいなぁ」 どこのオフィスでも、担当職員はしばらくパソコンと睨めっこして、こう答える。しかし、全〇空だけは対応が違った。良い意味で違えばよかったが、「できません」と即座に答え、取り合ってもくれない。同じ日本人が困っているというのに……。 どうやら帰る道はなさそうだ。もうこうなったら破れかぶれ。各航空会社のカウンターでチェックイン手続きをしている地上職員と顔見知りになることにした。 「何か、良い知らせはない?」 30分ごとに訪ねる。困った顔をする職員もいれば、親身になってくれる職員もいる。 どのくらい時間が経過したのだろう。 「なんとか、飛行機に乗れるかもしれないわよ。1時間後に離陸する飛行機のチェックインがまだの人がいるの。あと30分しても来なかったら、乗せてあげられるわ」 オフィスでも一番親身になって相談に乗ってくれた、オーストリア航空だった。 1時間後、私は晴れて「空の人」となることができた。 (驚いたことに、その飛行機は、オフィスでもカウンターでも、一番冷たかった全○空との共同運航便だった……) |




































