英会話(名古屋・金山) BRIDGE - Discovery(1章)


Discovery

序章 第1章 第2章 第3章 第4章 第5章 第6章 第7章 第8章 第9章 第10章 第11章 第12章
第1章   〜一発大逆転〜
ヨーロッパを旅行中、無性に砂漠を見たくなり、モロッコに飛んだことがある。初めて足を踏み入れるアラブの国は、まさに異郷の地。私はこれから始まるアドベンチャーにわくわくしていた。

モロッコの都市の多くは、城壁に囲まれた旧市街(メディナ)とその外に広がる新市街に分かれている。メディナの中でも、スーク(市場)と呼ばれる一帯は特に賑やかで、細く起伏に富んだ、迷路のような道は常に人で溢れ、その間を荷を積まされたロバが行く。右へ曲がり、左へ折れるその道の両側を様々な店が軒を連ねる。革製品、真ちゅう細工、貴金属、絨毯、衣料品、日用雑貨、肉に野菜、香辛料…。ありとあらゆる種類の店先では、お客と店の主人が声高に話し、職人は奥で雑多な音を響かせる。

古都マラケシュには、世界最大といわれるスークがある。本当に世界最大かどうかはさておき、私はこのマラケシュのスークを幾日も歩いて回った。ただ単にサハラ砂漠へ向かうバスを待つためだったが、何度足を運んでも新鮮で飽きることがなかった。ようやく頭の中に地図が出来上がった頃、私はその子たちと出会った。その子たちとは、上は15歳から下は5歳くらいの少年の集団で、観光客にお金や物品をせびる。私の行くところ、行くところ、後を追い続け「お金をくれ」「ボールペンをくれ」と、とにかくしつこい。その辺のお店に入ったり、モスクや神学校に姿をくらませても、出てくるとずらりと並んで待っている。しかも時間の経過と共に子供の数が増えていくではないか!
「私を追い回しても何も出てこないよ。他の人をカモにすれば?」
と言ってみたところで、去ろうとしない。そして、私はひたすら無視し続ける。日が暮れかかった頃、ようやく彼らが子供であることを思い出し、言ってみた。
「そろそろ家に帰りなよ」
すると彼らは、帰れない、と即座に答える。どうやら、今日の収入が足りない、ということらしい。気の毒に思わなくもなかったが、ここで1人に小銭をあげたら全員にあげなければならない。昼は10人程度だった子供たちも、なぜか20人を裕に越えている。
「だから言ったでしょ。私の後を付いて回っても何も出てこないって」
すると、年長の少年がすかさず言う。
「僕らは丸1日君に付き合ったんだ。君の行きたいところへ案内した。だから、君は僕らにガイド料を支払うべきなんだ。払ってくれるまで、僕たちは君を追いかける」
「あ、そう。わかった。そういう場合はガイド料が必要なのね」
「そうだ、そうだ」の大合唱。
「私、今日1日、君たちの前を歩いてきたのよ。ガイドだったら、ガイドらしく私の前を歩きなさいよ。今日、君たちのガイドをしたのは、私よ」
「君は外国人だ。君にガイドができる訳がない」と反発するリーダー。
「外国人が寄りたいお店と食べ物の嗜好がよくわかったでしょ。早くガイド料をちょうだい!払う気がないなら、さっさと私の前から消えて」
すると彼らは円を作り、何やら会議を始めた。アラビア語なので、何を言っているのかさっぱりわからないが、もう付き合ってられないわ、と立ち上がったところ、
「ちょっと、待て」とリーダーに引き止められた。
よく見ると、コインを差し出している。
「ガイド料を払うよ」
差し出したコインなど、受け取れるわけがない。家に持って帰るよう説得したが、彼らは引き下がる様子もなく、最後には「プレゼントするよ。またマラケシュに来て」と言い残し、方々へ散っていった。

私はこの体験を今でも時々思い出す。
十数年も前の出来事である。

2001年11月09日
BRIDGE代表   SACHIKO


先頭に戻る 英会話BRIDGEのHOMEへ移動